各種のセキュリティ認証のなかで、個人情報保護を対象としたプライバシーマークと、情報セキュリティを対象としたISMS認証の2つが、取得する検討対象に上がりやすいものとなります。この2つの認証は、取引条件に設定されるケースが多いことと、すでに取得している社数の多さなどから信頼度が高いことが特徴となっています。
ただし、どちらの認証でも日本国内におけるアピール効果という観点では遜色ありませんが、取得を目指す企業の状況によってメリットの大小は変わる可能性があります。
そこで、これから取得を検討する企業に向け、比較すべきポイントについて解説いたします。



プライバシーマークとISMS認証の制度比較

プライバシーマークは個人情報保護で、ISMS認証は情報セキュリティと、一般的には理解されていますが、認証の対象となる範囲や審査に関連する作業で詳細を比較すると、かなり差があることが分かります。そして、この差が、それぞれの認証を取得したり維持するためのリソースやコストに反映されることになります。

新規認証取得時の作業負担や費用コストについて

どちらの認証も、自社でマネジメントシステムを構築し、PDCAサイクルに基づき、最低1回転運用を行って、教育・監査・マネジメントレビューといった運用記録を作成して、審査機関に申請のうえで審査を受審するという流れは同一となります。

しかし、審査基準を充足するための情報セキュリティ対策を新たに実施する必要性やマネジメントシステム構築にかかる作業負担は、企業により状況は変わりますので一概に言えませんが、プライバシーマークは個人情報のみ対象とすればよいのに対して、ISMS認証は全ての情報資産が対象となるため、対策を実施する範囲が広汎になりやすくなります。

さらに、審査費用については、プライバシーマークよりもISMS認証の方が、同じ事業規模であれば高額になるケースが多くなります。ISMS認証の審査機関の見積基準は、当社調べにおいては公開されていませんが、審査日程の設定がプライバシーマークは1日であるのに、ISMS認証は原則複数日になりますので、その分が審査費用に反映されているものと思われます。

従って、単純に費用面で比較した場合には、総合的にプライバシーマークよりもISMS認証の方が認証取得するための作業負担や費用コストは高くなるケースが多いと思われます。

この点、ISMS認証については、適用範囲を狭く設定することで負担は軽減可能ですが、それが認証取得の目的と合致しているのかどうか(外部へのアピール効果として問題ないかどうかなど)については、慎重な確認を要します。

認証維持に関する作業負担や費用コストについて

取得時の作業負担や費用コストも重要ですが、取得後のランニングコストとなる、認証維持に関する作業負担や費用コストも、比較ポイントになります。

例えば、審査基準が改定されますと、通常の年間運用に加えて、新審査基準への対応作業として内部規程の改定や実施しなければならないイベントの増加といった作業負担が発生します。これは、頻繁に審査基準改定が発生すると、作業負担が増すということにつながります。認証維持に関する事項を、プライバシーマークとISMS認証で比較した結果をご確認ください。

ISMS認証は適用範囲の設定によってランニングコストは大きく変わりますが、プライバシーマークの方が認証維持のための人的な作業負担は大きくなりやすく、一方でISMS認証の方が費用コストについては高くなる可能性が高いということになります。

プライバシーマークとISMS認証の両方取得、あるいは乗り換えについて

よく比較される2つの認証ですが、両方を取得するという選択は可能です。プライバシーマークを取得するために構築が必要な個人情報保護マネジメントシステム(PMS)と、ISMS認証を取得するために構築が必要な情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)は共通事項が多くあるため、内部規程を一部共通としたり、年間で運用するイベントを同時実施することで作業負担を軽減し、両方を取得し、維持していくような対応が可能です。

ただし、よくお受けするお問い合わせで「プライバシーマークとISMS認証で、運用ルールや記録作成、使用様式などを全て共通にしたい」「完全に一体化できないのか」という点については、可能ではあるものの、推奨しづらいものとなります。

この理由としては、ISMS認証の適用範囲が全社ではない場合に、適用範囲外の部署におけるISMS運用ルールをどうするかという課題があること、プライバシーマークとISMS認証でリスクアセスメント手法が大きく異なること、特に個人情報保護法に関する事項については、プライバシーマークとISMS認証の審査では詳細確認されるレベルが大きく異なり、ルールが統一しづらいことなどが挙げられます。

また、いくら運用ルールや使用様式を統一しても、審査はそれぞれの認証で別々になりますから、プライバシーマークの審査員がISMSについて理解しているとは限らず、逆もまた然りですので、審査がスムーズに進まないという可能性も考慮する必要があります。すなわり、運用ルール等を統一する目的である「プライバシーマークとISMSを一体化して運用負荷の軽減をはかりたい」という大きな目標から実態が外れていってしまうということになりかねません。

もう1点、認証の乗り換えですが、プライバシーマークからISMS認証への乗り換えについては、個人情報から情報資産に審査対象が拡大されるため、情報資産の特定という作業が発生します。また、リスクアセスメントは手法が異なるため、やり直し作業が必要です。ただし、それ以外は概ねスムーズに進めることができるものとなります。

逆に、ISMS認証からプライバシーマークへの乗り換えは、情報資産として個人情報も特定済のはずですから、個人情報の特定という作業に関する負担は小さくなります。(リスクアセスメントは、やはりやり直し作業が必要になります)ただし、個人情報保護に関する法令対応はISMS認証より細かいルール策定が必要ですし、要求事項によっては法令よりも厳格な対応が求められますので、新たな運用も必要になってきます。

目的と合致した認証取得について

上述のように、プライバシーマークとISMS認証は、共通する部分がありながらも、作業負担や費用コストを細かく見ていくと、かなり差異があります。このような点を踏まえて、取得するべき認証をどちらにするか検討していく必要があります。重複しますが、2つの認証のメリットをまとめましたので、ご確認ください。

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