ES-Reports vol.03「セキュリティ認証って取るべき?いらない?」
そもそもセキュリティ認証を取るべきなのかどうか、悩まれてませんか?漠然と「取得した方がいいんじゃないか」という考えはあるものの、なかなか踏み出せない。
「そのうち必要になるかもしれないけど、取るのも大変だと聞くし…」
そんな、セキュリティ認証を取るべきかどうかのお悩みに対して、ケース別に解説します。
最初公開日:2025年11月25日 最終更新日:2026年3月23日
【本レポートでお伝えしたいこと】
- 本レポートでは、現時点で日本国内で取得可能な認証と、セキュリティ認証を取るべきケースについて、理由も含めて解説します。
- ケース別に、どの認証が最適と考えられるのか、考察しています。
情報セキュリティの取り組みは必須
現在の社会情勢を鑑み、情報漏えいが企業の経営や社会的信用、ひいては業績にまで大きな影響を与えるリスク要因であることに疑問の余地はありません。従って、情報セキュリティに関する取り組みの推進は「やらなくてはいけない」課題であることは衆目の一致するところです。ただし、情報セキュリティに関する取り組みを推進するとして、どこまでやればいいのか、目標をどう定めるのか、セキュリティ認証まで必要なのか、悩まれているケースはよくお聞きするところです。本レポートでは、情報セキュリティの取り組みの目標として、セキュリティ認証の取得まで考えるべきなのかどうか、企業の置かれているケース別に解説します。
セキュリティ認証の種類
日本国内で取得可能な、情報セキュリティ・個人情報保護に関する第三者認証の例を次に挙げます。
「第三者認証別の概要」
| 認証種類 | 認証の対象 | 概要 |
|---|---|---|
| プライバシーマーク | 組織/個人情報保護 | 審査基準は個人情報保護法の上位規格に位置づけられるJIS Q 15001を包含した指針 |
| ISO/IEC27001(ISMS) | 組織/情報セキュリティ | ISO規格に準拠した国際認証 適用範囲の設定により、部署やサービス単位での認証取得が可能 |
| JISEC | IT関連製品/情報セキュリティ | 政府調達に使用 |
| CBPR認証 | 組織/個人情報保護 | 国境を越えて個人データの移転を行う企業等に対してプライバシー原則への適合性を認証 |
| TRUSTe | Webサイト、スマホアプリ、特定サービス/個人情報保護 | 事業者が公表するプライバシーステートメントの内容を審査 |
| SRPⅡ認証 | 社労士事務所/個人情報保護 | 全国社会保険労務士会連合会が制度を運営 |
| JAPHIC認証 | 組織/個人情報保護 | 審査基準は個人情報保護法及び番号法 |
| JAPiCOマーク | 組織/個人情報保護 | 審査基準は個人情報保護法の上位規格に位置づけられるJIS Q 15001 |
情報セキュリティと個人情報保護に関する認証は、上に挙げた以外にも多くの種類があり、認証の対象も審査基準も様々です。では、それぞれの認証の詳細を理解して、自社にフィットしていると思われるものを選べばいいのでしょうか?
第三者認証をどのように使うのか?
第三者認証は、その認証を取得するための審査基準等を、自社がクリアしていることを対外的に示すものです。従って、第三者認証とは「対外的なアピールに使用する」ために取得するものとなります。
対外的アピールという観点に立つと、自社の業態によりアピールしたい対象は変わってきます。いわゆるBtoCの業態においては、アピール対象は一般消費者になるケースが大半です。この場合は、自社のWebサイトへの掲載や店頭掲示といった形でアピールすることとなります。一方、BtoBの業態においては、アピール対象は顧客企業になります。この場合は、アピールというよりも、取引条件や入札条件に指定されたり、取引継続を目的に要請されたりといった形になってくることが多いと思われます。
各認証の知名度とアピール効果
また、対外的なアピールという観点で見過ごせないのが、各認証の知名度という観点です。せっかく認証を取得しても、その認証の知名度が低い場合は、アピールにならないという可能性があります。
そして、第三者認証の知名度の高低を計る基準の1つは、その認証の取得社数となります。取得社数が多い=知名度が高い=アピール効果が強い、ということです。
自社にフィットしたセキュリティ認証とは
このように見ていくと、数あるセキュリティ認証の中からどれを選ぶのか、あるいはそもそも取るべきなのかどうかという点が明確になってきます。確認できる限りになりますが、取得企業数(製品やWebサイトを含む)、主なアピール対象、各認証間の相対的なアピール効果という観点で、各セキュリティ認証を整理すると、概ね以下のようになります。
「第三者認証別の特長」
| 認証種類 | 取得企業数(製品やWebサイトを含む) ※2025年10月時点当社調べ | 主なアピール対象 | 各認証間の相対的なアピール効果 |
|---|---|---|---|
| プライバシーマーク | 17,741社 | 個人顧客 顧客企業 | 高 |
| ISO/IEC27001(ISMS) | 8,254組織 | 個人顧客 顧客企業(外国企業にもアピール可能) | 高 |
| JISEC | ハードウェア及びソフトウェアのカテゴリで185製品 | 日本国政府機関 | 高 |
| CBPR認証 | 4社(グローバルCBPR) | 顧客企業(海外企業) | 中 |
| TRUSTe | 世界6300サイト(日本国内の取得数は不明) | 自社Webサイトを閲覧する個人 | 中 |
| SRPⅡ認証 | 2,331事務所 | 社労士が業務を受託する顧客企業 | 中 |
| JAPHIC認証 | 407社 | 個人顧客 顧客企業 | 低 |
| JAPiCOマーク | 現在の取得企業数は不明(2014年3月時点で13社取得済) | 個人顧客 顧客企業 | 低 |
第三者認証を取得する目的を「対外的アピール」に絞って考えると、本レポートのタイトル「セキュリティ認証って取るべきなの?」に対する回答が明確になってきます。「どこか外部にアピールしなければならない」場合には取得するべきですし、「現時点では特にアピール対象はない」場合には取得しなくてもよいということです。
どのセキュリティ認証を取ればいいのか?
セキュリティ認証を取得するべきという判断に至れば、どの認証を取ればいいのかという課題が発生します。分かりやすいのは、BtoBの業態の企業において、顧客企業から取引条件あるいは契約継続条件として認証取得を指定される場合で、この場合は、その顧客企業との取引を行う(継続する)のであれば、指定された認証を取得するということになります。
一方、BtoCの業態の企業において、個人顧客に自社のセキュリティが万全であることをアピールする目的でセキュリティ認証を取得する場合には、アピール効果の高い認証を取得した方が良いということになります。また、個人顧客に対しては、情報セキュリティよりも個人情報保護が万全であることをアピールした方が効果的であるケースが多いため、認証の対象が個人情報保護に関するものを選択するケースが多くなります。
ケース別の考察
セキュリティ認証を取得する目的は様々ですが、特別な事情がなければ、原則はアピール効果が高い認証を取得するという判断が一般的になります。主なケース別の判断とその理由をお示します。
| ○ケース① 自社サービスは従来民間企業向けに実施してきたが、今後は自治体の入札案件にも応札することを検討することになった。希望する入札案件の仕様書を確認すると、資格確認欄に「プライバシーマークもしくはISMS認証を取得していること」と記載されており、どちらかの認証を取得する必要があることが分かった。 |
| ○取得するべき認証 プライバシーマークかISMSの二択だが、応札時期や資格要件の詳細確認結果により、判断は分かれる。 |
| ○理由 認証の取得が顧客企業から指定されていたり、自治体の入札案件における資格要件になっている場合、「どの認証を取得するべきか」は悩む必要はありません。ただ、このケースですと、次の要件により、どちらを取得するべきなのかという判断は変わってくる可能性があります。 【応札時期】 応札までの期間が短い場合、プライバシーマークとISMS認証で、より早期に取得できる可能性があるのはISMS認証となります。 【取得及び維持にかかるコスト】 ISMS認証を指定されている場合、ポイントになるのが適用範囲となります。プライバシーマークは”全社”が適用範囲となりますが、ISMS認証は”部署やサービス”の単位で適用範囲を設定できるため、適用範囲を絞って認証を取得することでコストを下げられる可能性があるためです。例えば、入札案件に関する業務を行う部署が限定されており、その部署だけ認証を取得すれば資格要件を満たせるのであれば、全社で認証取得するよりも低コストになる可能性があるということです。 認証取得の検討にあたっては、「いつまでに取得する必要があるのか」「全社で取得しなければならないのか、特定部署だけでもいいのか」という点も重要になりますので、顧客企業等に確認しながら検討することとなります。 |
| ○ケース② 今後取引を拡大する予定の顧客企業から「委託先に対して定期的に実施している情報セキュリティチェックシートに回答してもらいたい」と要請を受けた。受領したチェックシートは設問が200項目以上あり、回答作成に大変手間がかかる。顧客企業に確認すると「セキュリティの認証を取得している委託先には回答を要請していない」と言われた。 |
| ○取得するべき認証 受託している業務に個人情報の取扱いを含む場合もしくは全社での認証取得が必要な場合はプライバシーマーク、適用範囲を限定した認証取得が可能な場合はISMS認証 |
| ○理由 取引継続を前提とした顧客企業から自社のセキュリティ点検を実施される、ただし認証を取得すれば回避できるというケースになります。この場合は、認証の取得時期は指定されてはいないはずですので「顧客企業にアピールできる(認めてもらえる)認証のうち、取得や維持のコストが低いもの」を選択するという方針になります。 ただし、認証取得の検討にあたっては「このような要請を受けているのは1社だけなのか」「チェックシートの内容は毎回変わるのか」という点を、念のため確認しておくべきです。 複数の顧客企業から同様の要請を受けていたり、チェックシートの点検項目が毎回増えていくような場合には、認証取得した方が楽になると思われます。一方、「1社だけから毎回同じ内容のチェックをされている」という状況でしたら、チェックに合格できるだけの情報セキュリティの取り組み自体は必要としても、一度回答してしまえば毎回の回答作成は容易なはずですので、取得検討を先送りしても問題ないという判断もありえます。 |
| ○ケース③ 自社は金融商品を扱っており、業務の特性上、個人顧客の金融資産を把握している。最近、同業他社で情報漏えいが発生し、個人顧客から「おたくは大丈夫なのか?」と聞かれることが増えた。従来から情報セキュリティの取り組みは進めており、業界標準を超えるレベルを維持している自負があるが、自社が情報セキュリティに取り組んでいることを顧客にも見える形にすべく、認証を取るべきではないかと社内で議題に上がっている。 |
| ○取得するべき認証 プライバシーマークが優先だが、海外にも個人顧客がいる場合はプライバシーマークに加えてCBPR認証の取得も考えられる。 |
| ○理由 現時点で、日本国内では、一般消費者に広く認知されているセキュリティ認証はありません。従って、このケースでは、個人顧客の不安や懸念に対して分かりやすく回答するために認証を取得することとなります。そして、「全社を挙げて取り組んでいます」とアピールする必要がありますので、個人情報保護を対象とした認証を全社を適用範囲として取得するという判断になりますから、プライバシーマークが優先と考えられます。 |
| ○ケース④ 健康食品を、自社のWebサイトもしくは電話で注文を受ける通信販売を営んでいる。事業が軌道に乗ってきたが、退職した従業員が個人顧客の情報を持ち出した事件が発覚し、セキュリティ対策の必要性を痛感させられた。 |
| ○取得が推奨される認証 組織に対するセキュリティ認証であって、PDCAサイクルに基づく運用を実践するものであればどれでも有効であるが、プライバシーマークが優先 |
| ○理由 内部の情報セキュリティ強化を目的とした認証取得については、アピール効果は問題にする必要がありませんので、そもそも認証取得までは不要とする選択もありえます。ただし、情報セキュリティの取り組みを継続していくにあたって、その担保として、定期的な従業員教育や内部監査の実施が必要になるセキュリティ認証を取得するという判断はありえます。 このケースの場合は、保護したい対象が個人情報ですので、プライバシーマークを優先として、不都合があれば他の認証を検討するという考え方になります。 |
結論
セキュリティ認証の取得は、顧客企業等から指定されている場合を除き、一般的には対外的なアピールを狙って、アピール効果の高い認証を選択して取得するという考え方になります。
自社の業態がBtoCであれば、個人情報保護が優先されるケースが多く、プライバシーマークを優先的に検討することになります。一方、自社の業態がBtoBの場合は、受託する情報に個人情報が含まれる場合にはプライバシーマークが優先でしょうし、適用範囲を限定しても問題なかったり海外企業に向けてアピールする必要がある場合にはISMS認証が優先されるという選択になってきます。
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